とすん、と比較的軽い音がしたけれど、背中から落ちたので割と痛い。
「小松君!」
起き上がろうかどうしようかと思案していると、すぐにココさんが駆け寄ってきた。
「手加減したつもりだったんだけど、怪我はないかい?小松君、大丈夫かい……小松君……」
床に寝ころんだまま見上げると、僕の頭のほうでココさんがおろおろとしているのが見えた。
なんとなくおかしくなって、笑いがこみあげてくる。ココさんを笑ったわけではなくて、こうやって床に寝そべってる自分が楽しくなってきたのだ。
「小松君、どこか打ったりした?」
そろそろとココさんが膝をついて僕を覗き込んできた。その目は真剣で、そしてとても美しい。
(ねえココさん、あなたはどうしてそんなにきれいな目をしているんですか?)
少し長い前髪が、僕の額に触れる。
そっと、ココさんを驚かせないようにそのひと房を手に取った。ちょっと警戒するみたいに身を引こうとするので、僕はわざと苦しげな声を上げた。とたん、ココさんの顔色が変わる。
「痛むのかい?」
顔をしかめてうなずくと、不安なようすで僕の頭を軽くなでた。電磁波を読み取ろうとしているのだろうか。ココさんの目には今の僕はどんな姿で映っているのだろう。
「ココさん」
「うん、聞いているよ。ちょっと見てみたけれど骨には異常ないみたいだね」
それでもまだ心配そうにココさんの手が僕の体を探っている。もちろん直接触れることのないように慎重に。
「ココさん」
握ったままの前髪を引いて、僕と目を合わせないようにしているココさんの注意を引いた。僕の手に合わせてココさんの顔が動く。
「どうしたんだい?今日の小松君はちょっとおかしいね?――品がないのはいつものことだとしても」
僕の手を止めて、ココさんはチクリと毒を吐いた。
「そんなことはないですけど」
確かに、いつもの自分らしくない態度だと我ながら思う。けど仕方ないのだ。思い立ったが吉日、僕はやりたいと思ったことをやるんだ。だって僕はトリコさんのコンビだから!
「絶対おかしいよ」
「おかしくなんかないですよ」
「……おかしい」
はたから見れば僕たちのやり取りのほうが十分おかしかっただろう。なんとかそんなやり取りを繰り返したあと、ふっとココさんの顔から血の気が引くのが分かった。
「……ココさん?」
「小松君、ちょっとごめん」
そう言うと、ココさんは僕の頭を抱え上げた。ちょうど正座をしているところに頭をのせたので図らずも、僕はあの四天王の一人に膝枕されていることになる。
もがいても、ココさんは僕をしっかりととらえて離そうとはしなかった。
自分のしでかしたことが原因とはいえ、なんだか怖くなって見上げると、恐ろしいほど真剣な目が僕を見下ろしている。
僕は息をのんだ。
(――こんなにきれいなココさん見たことない)
シャープな頬から続くとがった顎、薄い唇は引き結ばれていて、言葉を発しようとはしない。じっとりと濡れる黒い瞳。その奥には今まで見たことのない光があって、ぎらぎらと熱く、ただそれだけで僕を捕らえて見せた。
穏やかで冷静で、たまにちくりときついことを言って人をにやりとさせる普段のココさんはそこには居ない。
やはり、彼も四天王と呼ばれる伝説のうちの一人なのだ――と思わせるには十分なその力は、トリコさんのような派手なものではなかったにせよ、確かにそこにあって僕を激しく威圧した。
(ココさん!)
ゆっくりとココさんの顔が近づいてくる。何をされるかもわからず、声も出ず、ただ震えて小さくなっているしかない僕に気がついたのか、軽く唇だけでココさんは笑んだ。
(――あ)
半月型をした唇のあるかなきかの頬笑み。
それから目を離すことができず、それが僕の唇の上に落ちてくるのを黙って感じた。
もともと馬鹿みたいにぽかんと開いていた口の中に濡れたココさんの舌が(!)侵入してきて、丹念に僕を探っていく。
まるでそれは深い口付けのような、でも僕にはそんな経験がなかったので何をされているかさっぱり分からず、けれどココさんの舌をうっかり噛んでしまったりしないように気をつけながら時が過ぎるのを待った。















本当の意味で最初に描いたココマ?情熱のままに突っ走りました。楽しい。